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歯科衛生士の面接

--3. 転職面接の質疑応答--

いよいよ質疑応答がスタート。面接担当者が主導権を握って、その質問に答える……というスタイルの影響もあって、多くの応募者が“選ばれる立 場に陥つてしまいがち。そんな受け身一方の考え方を、ほんの少し見直せば、面接力は劇的に向上する。

※ 歯科衛生士(正職員)をモデルに記載していますが、歯科医師・歯科助手でも原則は同じです。

受け身一方の考え方を見直してから臨む

●自分の回答を録音して“クセ"を直す
「○×しまして・・・」「○×なんですが・・・など語尾が完結しない言い回しや「あのー、それで」「やっぱり」「でも」などの連発はマイナス印象。
こうしたクセを直すには、実際の志望動機や自己PRを話す訓練が効果的。
自分が話しているところを録音し、時間をおいてチェックする方法を繰り返すとスッキリとした印象の話し方になる。


●基本単語の発声練習で小声を克服
八キ八キと聞き取りやすい声で話すのは好印象を与える必須条件。
面接担当者に「エッ?」と聞き返されたら、もう危険信号。
小さな声。
早□・語尾が消えてしまう話し方に心当たりがある人は、「○山×子です」「はい、そうです」「よろしくお願しヽします」など基本単語を10ー20語選んで発声練習をしておこう。


●背筋を伸ばして座る姿勢を体得
姿勢の善し悪しは、その人の印象を左右する。
みんな面接開始の当初は注意しているが、応答しているうちにだんだん地が出てくるのが座つたときの姿勢だ。
油断すると、徐々に背中が丸まつてきてしまう人が多い。
転職活動中は、常に背筋を伸ばして座るようにして正しい姿勢をカラダで覚えることを心がけよう。


●基本の敬語を使い慣れておく
使い慣れない言葉は出にくいもの。
尊敬語・謙譲語・ていねい語を使い分けたり、重複使用を避けるなど基本の敬語をマスターし、転職活動中は日常的に使うようにしておきたい。
とくに「拝見しました」「こ覧ください」「よろしいでしょうか」「ご了解いただけますか」など使用頻度の高いフレニズに慣れておけば、緊張したときもボロが出にくい。


「一緒に働きたい」と思われることが大切

■応答を通じて、うまくいかない応募者の典型的タイプ

人間が人間を評価・判定するのが面接。
担当者の質問に、こう答えたら採用は間違いなし……と断言できる、絶対的な″正解″は存在しない。
応募先の歯科医院が求める経験やスキルがあり、どんな質問にもスムーズに応答できる歯科衛生士の応募者でも、面接担当者に「この人とは同じ職場で一緒に働きたい」と 思われることが最も大切である。
あなたらしく面接に臨む一方で、「馴れ馴れしく友達言葉で話さない」「大手勤務の経験や過去の業績にこだわらない」「マイナス指向にならない」という点にも気を付けよう。


■キャリアのある人はとくに緊張感をもつべき

そのほか注意したいのは対人折衝やセールストークに慣れたキャリアのある歯科衛生士の応募者だ。
本人にそのつもりがなくても、気をつけないと妙にモノ慣れた印象、横柄な印象を与えてしまうことがある。
言葉に詰まりながら自分の″売り″を伝えようと必死になっている歯科衛生士の応募者などと対比され、最悪の場合は「誠実さや真剣味に欠けるのでは」という致命的な評価につながる危険もあることを留意して臨むようにしたい。
面接の質疑応答の目的は、単純に言えば雇う側と一屋われる側のマッチングの確認にあるが、その内容は歯科衛生士の応募者のパーソナリティにまでわたる。
転職に賭ける真面目な気持ちや真摯な姿勢を示して、まずは面接担当者に″相性のよさ″を感じてもらうことが最優先であると肝に銘じておく必要がある。
また同じ内容の答えでも、発声によってイメージが変わることにも注意。
「元気な明るい声」がベスト。
あくまで診療シーンにふさわしい落ち着きをもって、八キ八キ話すことを心がけたい。


質疑応答で好印象を与える5つののコツ

■相手の話を耳と目で聞く

質問や話を最後まで聞かずに途中で言葉を差し挟んだり、間きもらして「もう一度、言つてもらえますか?」などはNG。
真貪1に間けば、視線も自然と面接担当者に向くはず。
耳だけでなく、目でも聞くつもりで臨めば間違いはない。
話し上手でなくとも聞き上手なら「コミュニケーションカがある」と評価される。


■質問には誠実に答えていく

歯科衛生士の応募者の本音や素顔を探ろうと、面接担当者は直球だけでなく変化球も繰り出してくる。
だが、どんな難問・珍間でも目的は採用選考のため。
質問の狙いを理解して、冷静に誠実に答えていくことが大切。
多少無礼な質問をされても「採用選考に必要なことですか?」などの口調で切り返すのは考えもの。



■自分の言葉で話す

どこかで聞いたような型通りのことを話す歯科衛生士の応募者では、あまり面接担当者の印象に残らない。
面接攻略本などを参考にする際は、同じ本をライバルも読んでいると考えて十分に噛み砕き、自分だけの具体的な事柄や体験談を加味していく必要がある。
自分の言葉としてナチュラルに聞こえることも大切だ。



■簡潔な答えにプラスαを加える

しゃべり続けるのはNG。
応募書類に詳細に書いた長い職歴も、要約して話せばポイントを絞つた次の質問がくる。
質問には、まず結論で答えるのもコツだ。
ただし「こ兄弟はいますか?」「はい、います」など一問一答式では無愛想な印象。
「姉と弟との3人兄弟です」など簡潔なプラスαの説明をするのがコツ。


■面接担当者に感謝や好感をもつ

対人関係は鏡と似ている。
とくに初対面では「嫌な人だ」と思う相手から|よ好かれない。
面接担当者に対して「いい人だなあ、この人に会えてよかった」と思うことも、実は面接の極意だ。
少なくとも多忙な時間を割いてチャンスを与えてくれた人である。
最初のあいさつのときにも、その感謝の気持ちを言葉に。


応答は3つの角度で評価される

■質問の狙いを知ることが応答のコツ

転職面接は、知識やスキルがあれば合格する″回頭試問″とは違う。
マニュアルの丸暗記のような型通りの応答をしたり、ただ質問に答えているだけでは競争には勝ち残ねない。
たとえば「今日はわざわざ面接にお越しいただいて……」といった面接担当者の言葉。
普通は「こちらこそ、よろしくお願いします」と礼儀正しく返せばOK。
だが、もし自宅が遠い場合は、それだけではNG。
「前職場も、この近くでしたので」などと、通勤にムリのないことをアピールする必要がある。
画接に備えているのは面接担当者も同じ。
歯科衛生士の応募者ごとに確認したい事項があって、それが質問に反映されている。
だから、大切なのは何のための質問なのか真意や狙いを察すること。
それができねば、予想外の質問でも適切な応答が可能になる。
アガリ性の歯科衛生士の応募者ならとくに″ぶっつけ本番″ではむずかしい……。
自分の場合の選考ポイントやハンディ、疑間を抱かれそうなことを洗い出したり、面接担当者の評価判定のポイントを知っておくことも自信につながるはずだ。


■転職面接の採点傾向も念頭に置きたい

転職面接の評価判定は大きく3つの角度でチエツクされる。
まず見られるのは、前章でも述べた〈人物イメージ〉と〈歯科衛生士としてのスキル〉。
「実務能力面は書類選考の段階で目安がつくので、面接は人物第一で見ます」との意見は多い。
歯科医院の雰囲気に合うか、職場になじめるか……といった判定が行わねる。
2つめが〈業務関連スキル〉や〈意欲レベル〉で、どのくらいの時間やコストをかけねば、この歯科衛生士の応募者が戦力になるか、仕事を覚えた後に期待できる貢献度はどのくらいか……などが判定さねる。
そして3つめが〈就業適応力〉。
実際の勤務が可能か、条件が合うか……などが見られる。
歯科医院によっては、これらを独自の評価表にまとめて、複数の面接担当者の採点を集積して採否判定を行うケースもある。
どのような点が評価ポイントになるのか。個人での判断は難しいが、相談できるキャリアコンサルタントがいるのであれば、聞いてみるのもよい。

じっくり話せないことも多い

■基本事項の確認だけで終了する面接もある

書類選考がなく面接に到る場合もある。
事前に書類で絞り込みを行う歯科医院もあるが、応募書類持参形式の面接が依然として主流である。
ただし、この形式の面接を行う求人歯科医院に″書類選考がない″わけではなく、単に手順が違うだけだということは知っておくべき。
また「直接、話せばいいのだから履歴書は簡単でいい」と考えるのも誤り。
書類持参形式の面接には、幅広いレベルの歯科衛生士の応募者が大勢集まる。
その分、応募書類をもとに進められる質疑応答の″もち時間″は短い。
形式的な記述の書類では、選考に必要な情報が少なく、基本事項を確認されただけでタイムオーバーになりがち。
少しでも自分を売り込む時間をつくるには、内容や表現にも十分に配慮した応募書類の作成こそ欠かせない条件になる。


必ず確認したい歯科医院への疑問

■質問を´待つ″だけではサクセス転職が難しい

転職面接は、「ココだ」と見込んだ応募先に自分を売り込む″セールスの場″であるが、同時に応募先の歯科医院を″チェックする場″でもある。
求人広告や事前研究でわからなかった不明点や疑間点を解消して、その応募先が本当に自分に合う転職先であるかどうかを見極める必要がある。
質疑応答で何を間なれるのか、どう答えればいいのか……といつた不安や心配を抱く気持ちはわかるが、ただ採用されることだけを考えて質問を″待つ″姿勢では、最終目的である″サクセス転職″が難しくなる。
何のための転職面接なのかを、しっかりと頭に刻んで質疑応答に備えておくことが大切だ。


一般的な質疑応答の流れ

あいさつ(応募書類の提出)

1.導入の質問

最初は当たりさわりのない軽い話題が出るのが一般的。
歯科衛生士の応募者に緊張をほぐしてもらつて、うまく言葉のキャッチボールをしたいというのが目的だ。
笑顔で会話を楽しむくらいの気持ちで落ち着いて臨むとベター。


2.業務関連スキルの確認

応募書類を見ながらの質問が多い。
くわしい職歴や経験値や技能レベルを聞かれる。
数値やデータ、エピソードなどを使つて具体的に回答していくことがポイント。
謙虚すぎる発言はNG。
できることは自信をもって話したい。


3.仕事姿勢や適性の確認

仕事や職場に対する考え方、スキルアップに対する意欲、将来目標などが聞かれる。
仕事面 人間的な面のマッチングに加えて、意欲や向上心から入社後に戦力となるまでの期間の目安、入社後の貢献度の度合いや勤続意思などが判断される。


4.仕事内容・待遇の確認

面接担当者の側から事業内容や具体的な仕事内容、就業規則や待遇についての説明がある。
面接の前に洗い出しておいた疑間は、その説明で解消することが多い。
不明な点やあいまいな点があれば、ここで尋ねてしっかりと確認。


5.就業条件への適応力の確認

出張や交替勤務などの具体的な勤務条件に対応できるか、また入社可能日の確認などが行われる。
対応できることは八ッキリ「できます」と答えたほうがベター。
話題に関連した事項で不明点 疑問点があれば尋ねて、検討の材料にする。


6.給与条件の打診

評価が出揃う終盤になると、給与に関する質問や打診も多い。
面接担当者の役職によっては最低必要額を伝えて話し合うことも可能だが、基本的には歯科医院の提示額を待つ姿勢が望ましい。
具体額については、状況を判断して確認するのもよいが、場合によっては深追いはNG。


7.面接終了を告げられる

「最後に質問があるか?」は、 面接終了を告げるお約束フレーズ。
不要な質問、待遇関連の質問は考えもの。
意欲を“感じて'もらうより「本国の面接のお話で、ぜひ入社したいと思つたJことを熱く伝えるほうが効果もある。


8.就業条件への適応力の確認