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歯科衛生士の面接

--5. どう答える?ハンディに切り込む質問--

「ウイークポイント(弱点)を突かれたらどうしよう」。大丈夫、みんなウィークポイントはあるもの。ウィークポイントに切り込む質問が来たときの答え方を確認しておこう。

※ 歯科衛生士(正職員)をモデルに記載していますが、歯科医師・歯科助手でも原則は同じです。

「実務未経験」のハンディ

■単なる″精神論″ではライバルに勝てない
歯科衛生士の転職希望者がよく誤解しているのは、求人広告の〈未経験者歓迎〉という言葉の意味。
「この歯科医院は未経験者を優先的に採用してくれる」と思い込んでいる……。
ところが実際は大違いで、中途採用歯科医院が求めているのは実務経験者。
求人広告の〈未経験者歓迎〉という記述は、単に「未経験者の″応募も歓迎″していますよ」という意味でしかない。
というわけで、もし応募先歯科医院に採用人数を大きく上回る応募があり、面接に集まったライバルの中に経験者が多数いれば、未経験者が抱える八ンディは非常に大きい。
面接担当者から「今回は、経験者の応募が多いのでねえ……」といった言い訳めいた発言があるようなら、サバイバルのために金力でハンディ・カバーをする必要がある。
その際、最も注意したいのは″精神論″ではいけないということ。
気持ちのうえだけであれば、何とでも言える。
一生懸命、本当に命がけで頑張ります」などと訴えても不十分。
意欲が本物であり、未経験でも″使える″応募者であることを伝えるには、何らかの″一裏づけ″が不可欠。
それがあって、はじめて八ンディ・カバーになる。


ステップァップのため
「新しいことにチャレンジしたくて」「キャリアを積みたい」なども注意。
どういう分野でどうなりたいのか………目標を明確にして使わないと、単なる“マニュアル表現"になつてしまう。
前向きな姿勢をアピールしているつもりでも、またかとウンザリされるだけ。


■未経験者だからこそ″経験“をアピール
まず伝えたいのは、明確な志望動機と意欲。
将来目標はもちろん、未経験の仕事に就くために「資格を取得した」「独学で○○知識を習得した」などの行動実績をアピール。
気持ちでなく、具体的な努力の″経験″でないと説得力がない。
また応募先の業界や仕事と接点をもった″経験″も、業務への理解を示すうえで効果がある。
そして何より重要なのは、スキル面の″経験″アピールだ。
応募先歯科医院で応用できる業務知識や基礎技能があねば、八ンディの埋め合わせになる。
たとえばパソコンスキル、接客業務、リーダー業務、後輩指導など。
職歴の浅い人なら「新人研修」も評価対象のひとつ。
履歴書や職務経歴書に″職歴″として書くほどではなかった補佐業務でも、志望に関係することなら基礎力の証明に。
少しでも効果的な埋め合わせ要素を見つけるために、これまでの自分の″経験″を洗い出しておこう。


職歴関連のハンデイ

■立派な職歴がハンデイになることもある

キャリアがある人ほどカン違いしがちなのが、自分の実務経験を″絶対的な切り札″と考えてしまうこと。
自信たっぶりに、自分の経験の幅広さについて″演説″をしてしまう歯科衛生士の応募者さえいる。
確かに、中途採用では即戦力になる経験者のほうが有利。
だが、応募先歯科医院が求めるのは″幅広い経験″ではなく″役立つ経験″である。
しかも、そのニーズは多様。
場合によっては、立派なキャリアが敬遠されて八ンディになることもある。
主な理由は「当社のやり方になじめないのでは」「態度が横柄で扱いづらそうだ」といった印象のほか、待遇 給与面の折り合いをつけるのがむずかしい、など。
キャリアのある人は、こうしたマイナス面の存在も意識すべき。
実力者ほど″おこらず、へり下らず″という面接姿勢を貫きたい。


この仕事を選んだ理由は何ですか?

■転職回数が多くても隠すのはタブー

また、面接の職歴アピールで心がけたいのが具体性だ。
その点を曖昧にすると、せっかくの実力が伝わりにくいだけでなく、業務理解の不足を露呈することになってしまう。
そのほか八ンディとなりがちなのが、転職回数の多さ。
頻繁に転職を繰り返している歯科衛生士の応募者は「簡単に歯科医院を辞めてしまう人」と見られ、面接担当者のチエツクが厳しくなってしまうからだ。
だが、短期間だけ勤めた歯科医院を履歴書からも省き、隠すのはタブー。
たとえ数ヵ月でも正社員として勤務した歯科医院なら、″職歴″として伝えるのが基本。
とくに、直前の職場は採用歯科医院に提出する《一屋用保険の被保険者証》にも社名が記入されているため、隠していると入社手続きの際に問題になりがち。
最悪の場合は″経歴詐称″となり採用の取り消しにつながることも……。
やはり職歴は正直に伝えて、八ンディについてはカバーしていくのが賢い方法。
やむをえず短期退職した理由を説明し、応募先歯科医院への勤続意思をアピールして面接担当者に納得してもらうことで、採用選考への支障も最小限に押さえられるはずだ。


個人的な事情によるハンデイ

■プライバシーを主張しすぎてはダメ

本来、採用選考のポイントは歯科衛生士の応募者が就業規則通りに予定業務をこなせるかどうかの1点に限られるはす。
だから、仕事とは直接関係のない年齢や子どものこと、家のことやカラダのことなど……個人的なことに関する質問はプライバシーの侵害だ、と抵抗感を感じる人も少なくないだろう。
だが、面接でプライバシーを強硬に主張するのは禁物。
興味本位の質問をして楽しむほど、面接担当者はヒマではない……というのも実情。
採用選考のうえで必要だから聞いているだけだ。
もし面接担当者が個人的な質問を投げかけてきたら、それが自分の八ンディであると考えるべき。
まずは質問を受け入れる姿勢をもち、なぜそうした質問が出たのかという狙いに目を向けることが大切だ。


■年齢制限の理由に合わせたカバートークも必要

最近、求人広告に″年齢制限″を設ける歯科医院は減少傾向にある。
これは平成13年10月にスタートした「年齢制限の撤廃努力」を盛り込んだ改正雇用対策法の影響による。
それでも、まだまだ年齢制限を設けている求人歯科医院もわずかにある。
求人歯科医院が年齢制限を設ける理由は、さまざま。
「新規採用者の給与設定のうえから年齢制限を設定」「職場の年齢構成にマッチした人を望み、平均年齢に合わせて設定」「高額商品を扱うため、顧客対応を考えて30歳以上に」などがよくある例だ。
また年齢制限に関する考え方は、各社とも比較的ゆるい。
1〜2歳の誤差は多くの求人歯科医院がOKとしているし、中には「実年齢より10歳は若く見えるから」「感性が柔軟で、本人が年齢にこだわっていないから」「即戦力になる実力者だから」といつた理由で、明らかに枠外の歯科衛生士の応募者が選考対象にされる例も少なくない……。
そして枠外応募の八ンディカバーのコツのひとつも、実はその辺にある。
業務スキルや資格、業界知識の深さや顧客層との年齢的な接点、人生経験などもプラス材料として伝えていくのは基本。
求人広告の歯科医院情報などから年齢制限の理由を推測し、それに合わせた若い感性を強調するトークの準備や見た目の雰囲気づくりもして、面接に臨んでいきたい。


ケース:職場での年齢ギャップが気になりませんか?

■NGトーク

「まったく気にならないといったら嘘になります。
自分なりに努力して、新しい情報には敏感でいるよう努力していますが、若い部下や後輩などと接していると、ついつい″うるさく″なってしまうことがあります。
しかし、年長者としてはそうした指導も必要だと思っていますので、少しくらい煙たがられても、若い人と積極的に接していくつもりです」


■OKトーク

「これまで、仕事で年齢を意識したことはとくにありません。
感性や話題の点でも、若い社員との間にギャップは感じませんでした。
前の職場は20代が多く、同僚や後輩からもよく相談事をもち込まれましたが、そねも年齢的なことではなく、家族的な雰囲気の職場だったからだと思います。
直属の上司をはじめ役職者にも年下の方がいましたので、そうしたことにも抵抗感はありません」


ケース:自宅が遠いようですが、大丈夫ですか?

■NGトーク

「はい、大丈夫です。
地下鉄○○線を利用して、自宅から御社までドア・ツー・ドアで2時間ほどでした。
以前の職場は、もっと通勤時間がかかっていたので朝が早く、ちょっと大変でしたが、このくらいなら通うのもさほどつらくないと思いました。
残業も最終バスに間に合う2‐時くらいまでならこなせます」


■OKトーク

「はい、大丈夫です。
地下鉄○○線が開通して以来、自宅から都心へのアクセスが一段とよくなって、最寄りの○○駅から大手町まで1時間ちよっとの所要時間でした。
以前の職場もこの近辺にあり、以前はもっと時間をかけて通っていましたが遅刻・欠勤で迷惑をかけたことはありません。
残業も結構ありましたが、2‐時までなら問題なく対応してきましたし、必要な場合はさらに遅くなることもありました」


質問の狙い&アドバイス

従業員にムリなく勤務してもらうことは、労務管理のうえでも重要なこと。
歯科衛生士の応募者の住まいが勤務地から速いと、面接担当者は勤務時間と一の兼ね合いで「本当に通いきれるだろうか?」という懸念を抱くことになる。
残業が長時間におよぶマスコミ・制作系織種ヽ早番・遅番のシフトがある外食系歯科医院などの場合、遠距離通勤は困難になりがち。
この質問は、それを確認するためのもの。
もし、通常の勤務に支障なく通勤できる自信があるなら、そのことをキッパリと告げるべき。
NGトークのいけない点は3つ。
・まず、通うのは自分であり、それをツライかどうか決めるのも自分ず単なる感想では八ンディ・カバーにならない。
また残業対応を最終パスの時刻で区切るのもダメ。
業務のうえで必要な残業には、対応していく姿勢を見せるのが基本。
さらに通動時間については、履歴警への記述と同じく「徒歩や待ち時間、乗り換え時間などを省いた最寄り駅からの最短時間」でいい。
あえて長く言うのはソン。
通動に支障がないことを納得してもらう方法としては、OKトークのように通勤実績を.あげるのがイチバン。
比較参考になる具体例なら、前職場のほか、学生時代の通学経験などでもいい。
また応募先によって、通勤交通費の高さが大きなネックになることも留意しておきたい。
ケースに応じて「通勤交通費の一部自己負担もできます」といったひと言も必要。


ケース:お子さんが病気の時はどうしますか?

■NGトーク

「まったく気にならないといったら嘘になります。
自分なりに努力して、新しい情報には敏感でいるよう努力していますが、若い部下や後輩などと接していると、ついつい″うるさく″なってしまうことがあります。
しかし、年長者としてはそうした指導も必要だと思っていますので、少しくらい煙たがられても、若い人と積極的に接していくつもりです」


■OKトーク

「はい、うちの子はあまり病気もしないので、そういうことは滅多にないのです。
でも、緊急時などは仕方ないですから、近所に住んでいる母に頼みまして面倒をみてもらっています。
いつもは保育園に預けておりますし、多少の居残り保育には対応してもらえるので、少しくらいの残業も問題ありません」


ケース:職場での年齢ギャップが気になりませんか?

■NGトーク

「まったく気にならないといったら嘘になります。
自分なりに努力して、新しい情報には敏感でいるよう努力していますが、若い部下や後輩などと接していると、ついつい″うるさく″なってしまうことがあります。
しかし、年長者としてはそうした指導も必要だと思っていますので、少しくらい煙たがられても、若い人と積極的に接していくつもりです」


■OKトーク

「はい、近所に実家がありまして、病気のときや緊急時には、母が子どもの面倒をみてくねることになっていますので、通常の勤務に支障はきたしません。
また、普段は実家の協力を得なくても、仕事と育児を両立させられるように、保育園で延長保育を受けるように手続きをしましたので、残業にも通常に対応できます。
ただ、前の職場では常に業務の効率アップを心がけ、できるだけ定時内に業務を完了させるようにしてきました」

ケース:健康状態はもう心配ないのですか?

■NGトーク

「今後しばらくは月1回の検査には通わなくてはいけませんが、日常生活には問題ありません。
御社への応募に際して担当医師にも相談しましたが、そういう仕事内容であれば通常勤務もこなせるだろうと言われました。
日頃の体調管理には十分に気を配っていますし、自分でも注意しながら勤務すねば大丈夫だと思います」

■OKトーク

「はい、心配ありません。
担当医師からも、通常業務に支障はない……と、お墨つきをもらっています。
残業などの勤務対応の面でも問題はないとのことで、安心して社会復帰に踏み切りました。
実際、病気を機によりよい生活習慣を心がけるようになったせいか、現在では以前よりも健康になったと思えるほどで、体調がいいと感じられる分だけ業務にも専心できると考えています」