最近、様々な業界で「ライフ・ワーク・バランス」という言葉が聞かれます。各関係団体でも、歯科衛生士の離職防止、職場定着促進を目指して、ワーク・ライフ・バランスの実現を提唱しています。
多彩な勤務形態を導入することで、少しでも長く働き続けられる環境づくりを進めていこうというものです。

働き過ぎを見直す動き


仕事とプライベートのバランスをとること。近年、転職の動機の一つになっています。
「ワーク・ライフ・バランス」とは文字通り、「仕事と生活の調和」という意味です。仕事も生活の一部に違いありませんが、ここでいう生活とは、もちろん「プライベートな生活」を指します。内閣府の主導のもとに普及が進められ、各方面で働き方の見直しの必要性が認識され始めました。
 ワーク・ライフ・バランス実現に向けた一般的な取り組みは、どちらかと言えば「男性の働き方の見直し」が主流です。例えば厚労省が開催した「父親の育児休暇シンポジウム  パパが休むと日本が変わる   」でも分かるように、「男性も、仕事に追われる生き方を見直そう。家事・育児や近隣との付き合いに積極的に参加しよう」という呼びかけが中心になっている。と言ってよいでしょう。「働き過ぎは改めよう」というキャンペーンも、盛んに行われています。
 確かに現代の社会では、「仕事仕事で、家庭生活や地域生活がおざなりになっている」のは男性のほうが多いかも知れません。しかし女性の場合でも、仕事によっては働き過ぎてプライベートな生活がおざなりになるどころか、心身の健康を害する人も少なくないのです。歯科衛生士という職業は、その典型と言えるでしょう。



例外事由がある場合の法的義務には、

・求人広告内にその理由を明記する
・求職者からの問い合わせに対して、書面やメールなど、記録が残る形ですみやかに回答する

があります。

歯科衛生士にとって、特に重要な課題


働く環境だけでなく、プライベートな面もバランスよく考慮する必要があります。
 勤務が多忙でも、若いうちは何とか乗り切れるかも知れません。しかし、結婚、出産、育児などでプライベート生活の重みが増すにつれ、次第に両立が困難になってきます。
内閣府「仕事と生活の調和推進室」の発表によると、仕事をしていた女性の約70%が出産を機に退職しているそうです。そして退職した女性の4人に1人は、「働き続けたかったが、仕事と育児の両立が難しくて断念した」と答えています。
ましてや、交替勤務で夜勤もあるという歯科衛生士の場合は、他の多くの仕事よりずっと両立が難しいのです。実際の調査では、潜在歯科衛生士(資格をもっているが、働いていない歯科衛生士)の30%が妊娠・出産を機に仕事を辞めていました。
むろん、過重労働に疲れて辞めた人も少なくありませんでした。

 ですから歯科衛生士にとって、ワーク・ライフ・バランスは非常に身近で、大切な課題と言えましょう。

「業務の質」とも深い関係


適切な労働時間が、最適な業務に結びつきます。
若い歯科衛生士が多いところでは、平均年齢20歳代というのが一般的です。入職して数年で退職する人が多いため、平均年齢が低くなるわけです。一方、地方の場合は、子育てが一段落後に再就職する人が多くて平均年齢40歳代、といった所もあります。

こういった医院ごとの年齢層の偏りは、決してよいことではありません。健全な業務を展開するためには、どんな医院でも、新人、中堅、ベテランが適材適所に配置されていることが望ましいのです。特に新人教育において中堅歯科衛生士の果たす役割は大きく、その層が厚くなければ優秀な歯科衛生士を育てることはできません。

 また、頑張って働き続ける人が多いとしても、過重労働は確実に「業務の質」の低下を招きます。疲労はモチベーションを下げ、場合によっては医療事故にもつながりかねません。つまり歯科衛生士のワーク・ライフ・バランスの実現は、医院にとって、ひいては日本全体の医療にとっても、大きな課題なのです。

多彩な働き方で、よりよい仕事を


自分に合った働き方を、もう一度考えてみましょう。
歯科医院のほうも、ワーク・ライフ・バランスを真剣に考え始めました。
これまで、フルタイムで夜勤までこなすのが一人前の歯科衛生士とされ、そのほかの短時間労働の場合は非正規職員、パートタイムという扱いが一般的でした。歯科衛生士としてどんなにキャリアを積んでも、家庭の事情や自分の健康問題などでフルタイム勤務が難しくなると、非正規職員の形でしか働けない例が多かったのです。 正規の職員と非正規職員では、当然、待遇や保証に差があり、任せられる仕事の範囲、権限なども異なってきます。正規職員と同じ意欲を要求しても無理というものです。

 しかし、正規職員のままで様々な働き方を選択できるようになれば、歯科衛生士達はモチベーションを下げることなく、長く働き続けることが容易になるでしょう。

 多彩な働き方の例はいろいろあり、一部の医院では既に、短時間正職員や、日勤専従、夜勤専従、ジョブ・シェアリング(1つの仕事を複数で分け合って働く)などの制度をスタートさせています。就職先を探す時は、医院のワーク・ライフ・バランスに対する考え方にも関心