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2. 面接の基本マナーと常識

--1. 転職面接とは--

多くの転職者は、これから受ける<面接>に何かしらのイメージを抱いているもの。だが、少ない経験を基にした思い込みが強すぎると、予想外の展開に戸惑ったり判断力を失うことになりがちだ。中途採用では、求人募集をする理由も、ほしい人材も職場ごとに違う。当然ながら、面接のスタイルや雰囲気も千差万別だと知っておこう。

※ 歯科衛生士(正職員)をモデルに記載していますが、歯科医師・歯科助手でも原則は同じです。

「転職面接」はどこがどう違う?

求められるのは即戦力だけではない
中途採用は、即戦力を求められる点が新卒採用と違う・・・と問いたことがあるはず。
もともと中途採用は「欠員補充」を目的とするものが大半を占めていたからだ。
そこでは、即時に前任者の穴を埋める実務力が第一とされるのが普通だった。
欠員があったとき不定期に求人募集が行われ、採用後は早々に入社を求められるため、在職者の転職活動はとかく不利になるという側面もあった。
しかし、最近は中途採用に対する考え方も変化。
経営方針の見直しや規模の拡張、新規立ち上げの計画に沿って定期募集したり、優秀な人材を確保するために通年で門戸を開くなど、中長期の視点で外部に人材を求める歯科医院が目立って増えた。
職務経歴や専門技能などの必須条件はあっても、こうしたケースでは即時入社への対応や前任者の穴埋めをする即戦力は絶対条件とはさねないのが普通。
その分、発想・提案力や対人折衝力、指導力、目標達成力など、いわゆる「ヒューマンスキル」を重視する傾向が強くなっていることも知っておこう。


「何がしたいか」でなく「何ができるか」
では、転職面接は新卒時の就職面接とどこが違うのか。
もっとも違うのは面接担当者が評価対象とする項目、さらには選考結果の出し方だろう。
就職面接での質疑応答は、「入社後になにをしたいか」など自己PRと志望動機に集約される。
面接担当者は「学生時代に何をしたか」など歯科衛生士の応募者の自己インフオメーションを聞いて「将来性」を読み取り、自社にふさわしい人材に育つ見込みのある新人を選んで必要な人数を確保する。
しかし中途採用の面接では「将来性」といった不確かなものより、経験の中身や技能レベル、努力や発想・提案による実績といった「現実」が評価対象になる。
それだけに面接担当者もよリシビアにならざるをえない。
自己PRや志望動機のほか、職歴や前職の仕事内容などの質疑応答から、歯科衛生士の応募者が自社の求める人材かどうかを判断。
結果、該当する歯科衛生士の応募者がいなければ全員不採用という例も珍しくない。
それが転職面接の結果の出し方なのだ。


専任の面接担当者がいる歯科医院は少ない

■中途採用で面接が重視される理由

歯科医院にとって、中途採用には新卒採用にはない多くのメリットがある。
たとえば、教育訓練コストをかけずビジネスマナーや業務スキルをもつ人材を獲得できる、また他社での勤務経験が自社の体質強化や新しい戦略づくりのうえで役立つ……など。
だが、すべての歯科衛生士の応募者が期待に応えてくねるわけではない。
「高い技術力があり、非常に意欲的なので採用。
長期プロジエクトを任せたのに、より大きな目標に取り組みたいと1年足らずで退職」「職歴やスキルは申し分ない実力者だったが、社風に合わずトラブルメーカーに」といった話もよくある。
その意味では、中途採用は″八イリスク・八イリターン″ともいえる。
いくら慎重な書類選考をしてもヒューマンスキルは把握しにくく、歯科医院との相性への危惧も残る……というのが歯科医院の本音だろう。
そこで、少しでもリスクを軽減して自社に合う人材を選ぶために「面接」が欠かせないというわけだ。


■自分なりのシナリオをもって面接に臨もう

歯科衛生士の応募者にとっても、面接は書類では伝えにくい自分のよさを評価してもらうチヤンスだ。
とくに未経験職種に応募する場合は、ヒューマンスキルが採否に結びつく例が多い。
もし「適切な面接」によって採用されれば、その歯科医院は働きやすいはずである。
とはいえ「適切な面接」を行うことは、専任の部署で長く採用人事に携わってきた「プロの面接担当者」にとっても容易ではなく、間違いを起こすことがあるという。
しかも留意しておきたいのは、応募先がよほどの大手歯科医院でない限り、そうした専任の面接担当者などいないという点だ。
こねから転職面接を受ける人は、そんな実情をふまえておくことも大切だ。
歯科衛生士の応募者の側が面接担当者のエラーを回避するのはむずかしいが、面接は双方のコミュニケーシ∃ン。
よく起こりがちなエラーを知っておくだけでも少しは違うはずだ。
受け身でいてはいけない。
その面接で自分が伝えるべきことは何か、確認すべきことは何かを事前にまとめ、質疑応答のキャッチボールの中で「適切な面接」となるよう自分なりのシナリオをもって臨みたい。

不可欠な歯科医院情報の収集

求人媒体やキャリアコンサルタントをフルに活用しよう。

応募先歯科医院の情報量の少なさも、転職活動が学生時代の就職活動と違う点のひとつ。
たいていの転職希望者は求人広告を頼りに応募先を決める。
だが、その情報はあまりにもわずか。
しかもカタカナの職種名や多様な雇用形態、給与のしくみなど特有の用語や省略表現もあって、歯科衛生士の応募者には理解しにくい内容も少なくない。
採用されたものの「こんなはずではなかったのに」といった事態が起こる理由は、そんなところにもあるはずだ。
求人広告への応募はスピード勝負。
いち早い反応が必要なのでジツクリと歯科医院研究をする時間をとりにくいが、応募の後でもまだ間に合う。
面接の前までに、志望業界や志望職種、そして応募先歯科医院のことを自分なりにできる限り調べたい。
専門の求人媒体であれば、経験豊富なキャリアコンサルタントに相談することもできる。
これは後悔しない歯科医院選びに役立つだけではない。
たとえば応募先の主要顧客が前職場と同じ業種なので営業のコツがわかるなど、効果的なアピール材料が見つかったり、情報収集の実績が入社意欲として評価されるなど、まさに一石二鳥だ。


■面接は最高の情報収集の場でもある

応募職種の仕事内容などは、直接、電話で問い合わせてもいいが、歯科医院情報は別の方法で調べるほうがベター。
集めた情報は、転職活動ノートを作って応募先ことに見やすく整理しておけば面接直前に見直したり、ほかの応募先歯科医院との比較検討にも役立つ。
そのほかに、必ずしておきたいのが応募先歯科医院の求人広告を再度、詳細にチエツクすることだ。
記述内容を憶測で判断してはいけない。
少しでも疑間を感じた点を洗い出してみよう。
用語や略語についての疑間点は求人情報誌の中にある「求人広告の見方」といったページで解消できることもあるが、調べても不明な疑問や尋ねないとわからないと思うことはメモ。
面接で確認できるように準備しておこう。
面接は、そうした情報収集の場でもあるからだ。



筆記・実技試験のある歯科医院も少なくない

■面接では何らかのテストがあることも

ときおり転職活動をはじめたばかりの歯科衛生士の応募者から間くのは「面接に行ったら試験があって焦った」という声。
実際、求人歯科医院が面接の際に何らかのテストを行っている例が。
説明を聞くだけなのだろうと考えていると、実質的な一次面接やテストが行わねることも少なくない。
安易な思い込みは禁物だ。
テストの有無については、事前に問い合わせれば教えてくれる歯科医院もあるが、くわしい内容までは間けないのが普通。
いずねにしても「テストがある」という前提で臨むのも面接の心構えのひとつ。相談できるキャリアコンサルタントがいるのであれば、問い合わせてみるものいいだろう。


■実技テストではふだんの実力を発揮できれば問題ない

適性や一般常識を問う筆記テストは、入学試験とは違って、上位得点者から順に合格……というわけではない。
歯科衛生士の応募者が多いケースには絞り込みの理由にさねることがあるものの、通常は面接を補完する選考材料のひとつとして参考にされる程度。
よほど悪い点数をとってマークされない限り、テストの成績だけが原因で落とされるケースは少ない。
一方、実技テストは選考に強い影響力をもつが、これも採用後の仕事に関係した基礎レベルの出題が主流。
軽く考えるのは危険だが、条件に合うレベルの歯科衛生士の応募者なら十分クリアできるはずだ。
ふだんの自分の実力に自信をもって、落ち着いて取り組むことをおすすめしたい。